自然の達人から聞く、小坂の魅力。
子どもの頃から大好きだった小坂の山で猟師と滝ガイドをしております。

(1)小坂の山で猟師を営む

 猟を始めたのは昭和46(1971)年からやで、もう40年になるんかな。猟師を始めたのは、山が好きなの。山が好きなだけ。
 僕らの子どもの頃は、猟っちゅうか、小鳥を獲ったり、ウサギを獲ったり、みんなそういうのが好きやった、田舎の子は誰でも。針金でわっぱ作って、ウサギを捕まえて毛皮をとったり。そういうことをして遊んだ。僕らの世代は。猟師になったのはその延長線やね。先輩がやっとったもんでね、「んなら俺も」とか言うて始めたのがきっかけ。
 ウサギも害獣でね、ヒノキとかの植林を齧っちゃうんで。カモシカよりひどかったの。それで昔は、ウサギを獲ると一匹10円とか20円とか報奨金がでたの。営林署とか、町とかから。どこでもいたの。すごくいたんやけど、今は少ないね。たぶん病気か何かで一時的にグッと減っちゃったって話。

 猟が可能な時期は、毎日出る。今日もあとで山を見てくる。見切りにいく。一人で。
 「見切り」が大事なんや、猟は。見切りってのは、足跡を見たりして、獲物が山におるかおらんかっつうのをみるわけ。それがしっかりできなんだら、何にもならない。
 で、確実にこの山におるということになれば、初めてみんなで「巻き狩り」しよる。巻き狩りってのは、巻いていくことね、5~6人で、四方八方から。「要所」があるの。通る道。全部同じところを通るわけじゃないけど、基本的な道が何カ所かあるわけ。その一番香ばしいとこについて、一人は追い役で入る、犬連れて。犬がおらんとダメやわな。で、他の人は銃をもって待ってるわけ。ほんと同じところを通るんで。だいたい決まったところを。
 先ほども言いましたが、猟で一番大事なのは見切り。その次に良い犬がいること。次に人数、それで鉄砲やね。鉄砲の腕はどうでもいい。
 ひと山だとね、5~6人じゃ足らないの。やっぱり抜け道がある。待ってるとこに来るとは限らない。どっかへ逃げちゃう。犬がいると、匂いで探すもんでね。すぐ犬が走っていくで。
 イノシシなんかでもね、人間だと馬鹿にしちまってね。追っても、グルッと回って後ろで見とったりね。すんなり逃げていかない。こっちの様子を見とる。人を見ると飛んで逃げちゃうやつもおるけどね。犬が追ってもね、途中まで逃げてくふりして、スッと向きを変えて、犬に向かってくるわけ。イノシシは賢い賢い。

 「捌き」はね、最初は出来なんだ。そんなの出来んよ。それでもやらされて、そのうち慣れてくる。若い者から順に、腹をとったりね。「おまえやれよ」っつって。でも今、僕より下がおらんもんで、今でもずっとやっとるわけ。ただみんな積極的にやるんで、どうしても僕がやらなあかんちゅうわけじゃないけど。よそだと、それは新人の役目。
いずれにしても、獲ったいのちは無駄にはしたくないからね。大事にしないと。いつもそう思っとる。

(2)猟師の現況

 当然、銃を持つには警察の許可が必要なんでね。所持許可を取るのと、あと猟の免許を取らなきゃいけない。警察の所持許可だけを取れば、射撃場で撃つことはできる。クレー射撃。でも猟はできない。猟をやるには、環境庁の試験を受けて免許を取って、毎年申請して、税金払って、ということをして、初めてできるわけ。
 僕が20代前半の頃は(猟師が)けっこういたの。今は1/3とか、1/4になっちゃった。全国で猟友会員がね、30万人とかいたのが、今は10万人。岐阜県では三千人とか、そんな単位。

 小坂ではね、今、猟師は6人になってる。
 一番年齢の高い方は73歳かな。去年までは80歳の人がおったけど、引退しちゃった。猟は、体力がいるもんでね。
 だから後継者の育成、これをやらなイカンの。
 害獣が増えて、イノシシとか鹿や猿の被害が多いでしょ。今のままやったら、ほんとに野放しで大変なことになっちゃう。
 ただ、「やってみたいな」と思う人がいても、取っ掛かりがいるでしょ。だから説明会を開くとか、まずそのきっかけを作ってやらないかん。実際はまぁ、そこから免許を取ったり、簡単なことではないけど、そういう説明会を開いて、何人か興味ある人に「おれでもできるな」って思ってもらえればいいと思うんや。まずはそういう取っ掛かり。
 なんかスポーツみたいな感じで、山ん中を回ってくるのがおもしろいわな。イノシシがどう動いたかを見るのが目的で。

 ただね、実際に猟をするとなると、まず家族の人は反対するやろうしね、銃を持つということに対して。
 確かに「危ない」って感覚は否めんけど、銃の扱いにしてもね、「こうしちゃあかん」ということが、「銃刀法」なり「火薬類取締法」なり、あとは環境庁でいうところの「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律」、その三本柱で決まっとるの。ほんとに細かく決まってるの、やってはいけないことが。事故を起こした人の調書を見ると、違反が3つも4つも重なってる。違反するから事故が起こる。それらの法律をきちっと守れば安全なんや。まず事故は起きない。
 単に興味本位でやろうと思ってもダメ。人によっても誘える人と誘えない人がいる。隣近所と喧嘩するような人はダメよ。「あの人、銃を持っとる」なんて思ったら怖いでしょ。何も言えなくなる。なので、許可をおろす時には本人の隣近所の人にも調査するんやわ、「あの人、銃を持たせても大丈夫?」って。だからそもそも、穏やかな性格の良い人しか銃は持てないことになっとる。

 女性でも、鳥を撃ったりする人はおられるね。イノシシやる人は僕は知らんけど。付知にもみえたし、瑞浪には銃持って猟をやる人が4人おられたんですね。父ちゃん母ちゃんがやって、娘、息子、一家でやっとたりね。射撃大会なんかやると、その4人とも来られたもん。毎年、河合村とか宮川村に山鳥を撃ちに行っとったんやけどね。そうするとね、一宮かどっか、愛知の方から夫婦で、奥さんが一緒に来よった人もおるし。

(3)小坂の滝ガイドとして

 滝のガイドをやらせてもらっとるんやけど、実はね、もともとは「こんないいところは人に知られてほしくない」って思っていたタイプ(笑)。
 ところが始まってみればね、それまでは「自分だけのところや」と思っとったけど、みんなで行けばもう自分だけのものではないもんね。今さら隠しとる場合じゃなくなっちゃったんで。なら、逆に一緒に入れてもらった方がいいかなって。滝めぐりをやるって決まったからにはね、どうせならきちんとその良さを伝えたいというのもあるし、また知られていない良いとこもいっぱいある。コース以外のところは険しいから、よくわかったガイドは必要やでね。

 やっぱりね、「お国自慢」って意識があるもんで、連れていく方としては自慢したくなるんやな、どうしても。相手はどう思ってるかわからんけど。「こんな程度か」と思っとる人もみえるかもしれんし、中には。もっととんでもなく険しいところに行く類の人はいっぱいみえるでしょ。一方で、一般的にはそうでない人の方が多いやろうし。 だから、レベルを揃えていくちゅうのが難しいわな。全員が行けるようなコースにすると、やっぱり、それなりのところになっちゃう。普通の人は簡単に連れていけないでしょ。危ないもん。石が落ちてくるかもしれんし。
 でもね、誰でも冒険心が出てくるもんで、もっと難しいところに行きたくなる。そこがおもしろいね。僕なんかでもね、探索するというつもりでもないんやけど、魚釣りに行けば、ついでに沢を登って、帰りにあちこち回ってくるわけ。猟に行ってもそう。開拓っていうわけでもないけどもね、おもしろいよ。知らないとこがあると、どうしても行ってみたくなるもんで。

 で、小坂の「お国自慢」はね、「日本一がたくさんあるよ」っていう話。こじつけかもしれんけれども。
 まず御嶽山。日本で一番高い活火山は富士山で、御嶽山は二番目なんやけど、実際に煙をはいてる活火山は御嶽山 が一番。もっとも、煙とは言っても水蒸気やろうけど、あれは。だけどまだ出とる。剣ヶ峰の下、長野県側の地獄谷の方。こっちからはね、下呂の方から登ると見える。でも風によってね、雲なのか煙なのかわからんときもあるけれど。日本で一番。それがひとつ。
 次の日本一は濁河温泉ね。温泉街としては日本一高いところにある。温泉そのものは、もっと高いとこにでもあるけど、旅館があって町になってるのは、濁河が日本一高い場所にある。 三つめはね、そのすぐ下にある高地トレーニングのグランド。1700m。日本ではあそこが一番高い。
で、次は溶岩流の流れた距離。もうひとつは巌立のパワー、これらも日本一やって。勝手なこじつけでも何でもいい。

 もひとつ、イワナがおるでしょ。兵衛谷の奥、1750~60mのとこにイワナがおるのよね。これも「一番高いかな」と思って水産試験場に聞いて調べてもらったら、「う~ん…」って。「そんなこと初めて聞かれたよ」って。調べていったら、文献には2千m超えたとこにもいると。それは黒部川。実際に黒部で釣りはやっとらんのでわからんけれども、おるんやろね、やっぱ。

 とにかく、小坂のいいところは、何といっても自然。山と川。そんな自然が大好きで、今でもその中で猟をして暮らしとるわけや。
 猟の許可された期間は、11月15日から、普通だと2月15日までなんやけど、去年からは3月15日まで延長になった。イノシシとか鹿狩りに関しては。数が増えてきたから。なのに獲れないの。いっぱいおるのに。
 猟師の人数が足らんのが大きい。おっても年寄り、脚が悪いとか、腰が痛いとか。だから、どっかで後継者を育てていきたい。育てていかないかん。そう思っとるんやけどね。

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